長年同じマンションで生活していますが、数年ほど前に鳩の被害が大きくなったことがあります。いまになって振り返ってみると、当時は廊下やベランダに出るのも嫌な気分になっていました。鳩の白い糞が駐車場の車に落ちると物凄く汚れが目立ちますし、階段や廊下も糞のせいでとても汚くなっていました。家の外に出るたびに鳩の糞が落ちてこないかと心配になるのは日常茶飯事で、実際にせっかく洗って干した洗濯物が糞で汚れてしまったこともあります。

しかもマンションともなると個人で出来る鳩対策も限られてきます一時期は引越しも考えたのですが、学校に通う子どもがいますし、鳩の糞害をのぞけば生活するのに支障のない立地条件だったので、このまま諦めて暮らすしかないと思い詰めていました。

しかしテレビで鳩の糞害が及ぼす危険性について報道されているのを見て、考えを改めました。鳩の糞は病原体を踏んでいる危険なもので、糞が乾燥すると空気中にその病原体が広がって人間に感染する恐れが出てきます。症状として肺炎髄膜炎を引き起こすとまで聞けば、子どもや主人が鳩の糞害がきっかけで病気になったらどうしようと嫌な想像ばかりしてしまって、黙って放置しておくのも怖くなりました。

私が管理組合に鳩対策について話し合いの場を作ってほしいと頼んだのは、こういった経緯があったからです。最初は管理組合のほうも個人で対処してほしいという話で、まったく取り合ってくれませんでした。しかし何度も熱心にお願いしていると、一度だけ住人同士の話し合いの場を設けてくれることになったのです。

その話し合いの場に行って驚いたのが、私以外にも鳩の糞害で悩んでいる人がたくさんいたという事実でした。実は他の人も私と同じように不満を抱えていましたが、表に出して言う人がいなかったのです。私が声をあげたことで隠れていた鳩の糞害が明らかになり、マンション全体をあげて鳩対策をしようということになりました。

こうなると鳩対策を練るのも簡単で、まずは鳩の糞の数を減らす対策を考えることになったのですが、最初に出た鳩避けネットは建物の外観を損ねるという理由で、組合のほうから却下されてしまいました。出来るだけ外観を損ねない方法で対策してほしいと、お願いされたのです。

そこで私たち住人が思いついたのが、糞がよく落ちているベランダや廊下の柵に場所にワイヤーを張る方法でした。こうすると鳩が柵に座れなくなるので、糞害も減るという作戦です。効果としては絶大で、ワイヤーを張っていないところと張っているところとでは、落ちている糞の量が明らかに違いました。

しかもこの方法だと、細いワイヤ―の存在が外からは見えないので、管理組合が気にする外観も損ねずに済みます。ただ廊下やベランダの中に入ってきた鳩には、この方法は通用しません。そこで他の人の意見を聞いて採用したのが、ローズマリーの鉢植えを各所に置く方法です。

ローズマリーの臭いを嫌う鳩は多く、この作戦も大成功でした。しかも住人の側からするとローズマリーの鉢植えは観葉植物としてちょうどよかったので、マンション全体の雰囲気を良くするのに一役買ってくれたのも嬉しいポイントです。

またとげがある薔薇も鳩が嫌いな植物だと分かったので、同じように活用しました。さすがに薔薇自体は育てるのが難しいので使いませんでしたが、薔薇に似た香りがする植物を置くだけでも鳩が寄ってこなくなったので、効果としては大満足でした。

その他にも住人間でいろんなアイデアを出し合って被害を減らす努力をしましたが、そうしているうちに実感したのは、鳩の糞害に対してみんなで共通した認識を持つことが出来るようになった点です。

これまでは個人で工夫するぐらいしかなく、そのため出来ることも限られてきました。でも管理組合を通して住民全員で鳩対策をしはじめてからは、この問題を住人全員の課題として考えるようになっていたのです。その結果、一番気になっていた鳩の餌をあげる住人の問題にもきちんと向き合うことができました。

鳩の餌やり自体は管理組合が話し合いの場を設けてくれる前から禁止されていましたが、やはりかげでこっそりと餌をあげる人は後を絶ちませんでした。鳩自体懐けば可愛らしい生き物ですし、自分一人ぐらいなら餌やりをしていても問題ないと考えている人も多かったのでしょう。

しかしマンション全体で鳩対策をすると決めてからは、誰かが餌やりをしているのを見かければみんなで注意するように心がけ、回覧板や掲示板などでも餌やりを禁止する理由を周知徹底するようになりました。

そのため自分勝手に餌やりをする人も減って、結果的に鳩自体が餌場をなくしてマンションから離れていきました。

今ではたまに鳩を見かけることはあっても、糞のことで悩まされることはありません。安心してベランダや廊下を歩くことができるので、管理組合を通して住人全員で頑張ったかいがあったと喜んでいます。